出品するテシマル1型は、音楽に造詣が深くテシマルに傾倒された愛好家の方から譲り受けたものです。 当方、メカについては門外漢ですが、エッジに経年劣化は感じられず柔らかです。コンデンサーの交換などの修理履歴は分かりませんが、グリルは再塗装され、内部配線関係は接点復活材で丁寧にメンテしていたと聞いています。出てくる音のコンディションは極めて良好で完動品と判断しました。しかし当方は寄る年波には勝てず、やむなく出品することにしました。 □ 「テシマル1型」について テシマルは米国インフィニティ社のRSシリーズとして登場しました。RSは“Reference Standard”の略で、リボン型ユニット「EMIT」を搭載しています。 インフィニテシマルには 0.1, 0.2, 0.3 の3種類がありますが、出品するテシマル1型（ＲＳ 0.1）後期は、愛好家の間で羨望のまなざしで注目される存在となっています。透明ポリプロピレンコーンから繰り出される中低音域と、リボン型ユニット「EMIT」からの高音域とのバランスは絶妙で見事だと感じます。 テシマル1型のネットワークは最もシンプルな６ｄｂの回路で、部品数が非常に少ないことで「自然で美しい音質」を生み出していると言われています。シリアルは連番ですが、“∞”ロゴマークが欠損しています。約40年を経過しても衰えを知らず、未だに現役として大活躍している稀有な存在です。 □ SPECについて 方式 2ウェイ・2スピーカー・ブックシェルフ型 使用ユニット 低域用:12.5cmコーン型 高域用:平面型(EMIT) 周波数特性 65Hz～32kHz 入力インピーダンス 4Ω クロスオーバー周波数 3kHz 外形寸法 幅160x高さ280x奥行130mm 重量 11.2kg □ 送料は宅急便の着払いで120サイズ程度です。 □ 私感になりますが・・・ 出品するテシマル1型は、４０年以上前に誕生したとは思えない洗練された音色と、小さな函体からは想像できないサイズを超えたスケール感を生み出します。また、心地よい音質から、いつの間にか聴き入ってしまう魅力があり、これに深く心酔される愛好家も多いと聞きます。 ジャンルを問わずあらゆる音源もこなしてしまうポテンシャルを秘めているようですが、その小さいサイズから大広間向きではないと思います。棚やデスクの上にのせて心地よい音色を楽しむようなスピーカーです。また、集合住宅のみならず夜間など、周りを気にしながらボリュームを絞り、ニアで聴いても心地良く透明で繊細な音を楽しむことができる音楽性豊かなスピーカーです。また、大編成のオーケストラや激しい音楽には不向きかと思いますが、ヴォーカルや室内楽、規模の小さいオーケストラに真価を発揮します。ピアノ、フルート、ヴァイオリンなどの再現は群を抜く秀逸さがあります。 世の中には名機と言われるスピーカーが星の数ほど存在しますが、このテシマル1型も、間違いなく名機の中の1台だと思います。 □ 598戦争とテシマル1型について 1970～1980年代は「オーディオ業界の黄金期」でした。オーディオブームは過熱の一途をたどり、1980年には「598戦争」に突入しました。メーカーはコストを度外視し大量の物量を投入したスピーカーが数多く生産されました。店頭には各メーカーから59,800円のSPが所狭しと並べられ、飛ぶように売れていきました。数々の名機が生まれる一方、メーカーの倒産が相次ぎ、あえなくブームは終焉に至りました。1990年代には日本経済もバブル崩壊の兆しが見え始めました。 まさにこの時期（1980年）には、無限小を意味するインフィニテシマルの名でテシマル1型の生産が始まりました。車載を考慮したのかも知れませんが、重量化や大口径化が進む日本のオーディオブームとは全く逆方向の異端児として誕生したことを改めて知り、出品タイトルには「歴史的名機」と多少大げさに書かせていただいた次第です。 40年間以上生き延び、多くの人から愛され続けてきた「テシマル1型」の最後を見届けるまで、大切に使っていただける方にお譲りできれば幸いに存じます。